第二話/下鴨神社で会いましょう。純白はよく染まる。

 

彼女は白いワンピースを着ていた。


初夏の日差しを受けて

彼女と彼女を包み込む空間は

キラキラと輝いていた。

 

 

「はじめまして」

 

お互いに照れつつも初見の挨拶を済ませる。

 

実際の僕の容姿を見て

彼女がどのように感じていたのかは、わからないが

少なくともその顔には

安堵の表情が浮かんでいるように見えた。

 

 

そして、僕も内心ホッとしていた。

 

(よかったー、髭面のおっさんじゃなくて。)

 

また、新たな緊張が芽生えるのも感じていた。

 

(うわー、こんな可愛い人とこれから京都で過ごすのか。)

 

 

コミュニティサイトでは

お互いのことをニックネームで呼び合っていた。

 

僕は彼女を”ルカさん”と呼び。

彼女は僕を”憂くん”と呼ぶ。

 

「はじめまして、憂です

 本名も憂です」

 

「はじめまして、ルカです

 私の本名は”ハルカ”と言います」

 

ん、ハルカ?


「ということは、お誕生日は春ですか?」

 

尋ねてみると。

 

「ううん、誕生日は十一月。

 

 だから秋だね」

 

ふふふ、そう言って彼女は笑った。

 


「お父さんがね、春が好きなの」

 

「ああ、なるほど、納得です」

 


憧れの女性”ハルカさん”

 

年は僕の2つ上だが

童顔で小柄な容姿により

実際の年齢よりもずっと若く見える。

 

そういえば

以前、送られてきたメッセージにも

居酒屋なんかに入るときに

よく年齢を確認されてしまうと、書いてあった。

 

納得である。

 

つい先日、切ったという

黒髪のボブヘアーが、涼し気に風に揺れている。


油断をしていると

ワンピースから覗き見える二本の健康的な太ももに

視線が釘付けになってしまう。

 

いかん、いかん。

 

(おれよ、紳士であれ!)

 


「白いワンピースが

 とてもお似合いです。

 初夏の訪れを感じます」


「ふふ、ありがとう

 憂くんも青いシャツが素敵だね」

 


彼女はよく笑う。

笑ってくれる。

 

その笑顔に救われる。


こんな風に、インターネットを通じて知り合った相手と

実際に出会うのは今回が初めてであった。

 

 僕は緊張していた。

 

彼女も、はじめて、だと言った。

 

きっと不安だったろう。

 

それでも彼女は

こうして目の前で微笑みを浮かべてくれているのである。

 

救われる。

 

ああ、空も雲ひとつ無い晴天だあ。

 


一通り初見の挨拶を済ませた後で

いよいよ、僕は口にする。

 

「それでは行きましょうか」

 

「うん、行きましょう」

 


さあ!いよいよ待ちに待った

嬉し恥ずかし愛の旅が、幕を開ける!!

 

 

__はずであった。

 


しかし、どうして?

 

現実はいつも僕に厳しい。

 

厳しいっていうか、理不尽だ。

 

「何でそういう
 嫌がらせみたいなことをするの(^-^)?」

 

神様に問いたい。
駆込み訴えたい。

 

 

__話を戻そう。

 


一通りの初見の挨拶を済ませ

いよいよ、僕は口にする。

 


「それでは行きましょうか」

 

「うん、行きましょう」

 


僕はゆっくりと歩きだした。

 

彼女も振り向き歩きだす。

 


そこで、僕は気付く。

 

彼女の異変に、その醜態に。

 

僕はその場に立ち尽くし

その無残な後ろ姿をただ呆然と眺めていた。

 

 


彼女の白いワンピース

 

天使の羽のように白いワンピース

 


そのお尻の部分が

 


濡れてる。

 


赤く。

 

 

血だ(^-^)

 

 


第二話/下鴨神社で会いましょう。純白はよく染まる。

 

ー完ー